LNGの施設に関する設計施工技術
(LNGの受入・貯蔵・払出・気化設備に関する最適設計技術と安全施工技術)
異種LNG混合受入貯蔵シミュレーション
近年LNG需要の拡大に伴う年間受入量の増大において、カタール産等の従来より軽いLNGをタンクに受け入れる運用が検討されている。軽質と重質のLNGを同じタンクで受け入れる異種LNG混合受入を可能にするために「ロールオーバ」「BOG発生量」等のシミュレーション技術を確立しています。
1.ロールオーバ
タンクに残留されているLNGより重いLNGが受け入れられる時、重いLNGが下層に、軽いLNGが上層に溜まり、二層を形成することがある。この二層の境界面は非常に安定で、この界面を通しての上下層間の熱及び物質伝達量は非常に小さく、上下層で別々の対流を起こす。この状態が長く続くと上層液はLNG中の軽質成分が液面から蒸発することにより重くなり、下層液は入熱による温度上昇により軽くなって、上下層の密度差が小さくなる。そしてある時点で急激な上下層の混合が生じ下層に蓄えられていた熱エネルギーが液表面からBOG量の急激な増大となって現れる。(下図参照)
2.ロールオーバを防止するために
1.に示したとおりタンク内LNGを層状化させた状態で放置することがロールオーバ発生の原因となる。従って、ロールオーバを防止するためには、
受入終了時点でタンク内LNGが完全混合であること。
が必要である。このためには、タンク内LNGを混合(攪拌)しながら受入を実施する必要がある。
3.混合のための方法
受入時にタンク内LNGを混合する方法として下図の3方式の研究を行った。研究内容は、以下の通りである。
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塩水による模擬試験
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各種理論及び模擬試験結果によるシミュレーションプログラムの開発
現在では、シミュレーションにより密度分布を正確に解析可能である。
4.初期液位の管理
特に、ボトムフィード受入混合方式については、
(1)タンク形状、(2)受入流量、(3)ミキシング運転
に対し、本シミュレーションにより適切な受け入れ管理用グラフを作成して、実際に運用されている。
5.BOG発生量の推定
タンク内LNGを混合しながら受入を実施するため、BOG発生量が大きくなる。このため、BOG発生量を正確に推定しないと基地全体としての安全性を損なう可能性が生じる。 そこで、コンプレッサによるタンク内圧制御をも組み込んだBOG発生量推定プログラムを作成し、BOG発生量及びタンク内圧の推定を行っている(下図参照)。
6.異種LNG受入シミュレーションモデルの概略
インバー配管溶接技術
低温(-160℃)配管で使用される18%ニッケルステンレス鋼(SUS)に比べて熱膨張係数が非常に小さいインバー(36%ニッケル)鋼をLNG配管に使用するための溶接技術を確立しました。 インバー配管を使用することによりSUS304配管で必要な熱応力吸収ループを無くし、配管を通るシールドトンネル断面積の減少によるコストダウンが図れます。
1.溶接施工方法の確立
ニュウブ/タンタル(Nb/Ta)を添加した新規試作溶接ワイヤによるインバー配管の溶接試験を実施しました。
新規試作溶接ワイヤ:TIGワイヤx19ケース(Nb系:0-1.12%、Ta系:0-0.6%)
2.溶接における検討項目
溶接における検討項目はミクロ組織、シャルピー衝撃試験、曲げ試験、補修溶接試験、再熱割れを実施し、溶接施工方法を確立しました。
mini-TOP自動溶接システム (ステンレス鋼管向けTIG自動溶接工法)
LNG配管を始めとするステンレス鋼管の現地溶接施工に対して、省技能、品質の安定、信頼性の向上を目的に開発したTIG自動溶接工法です。
1.特徴
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初層から仕上げ層まで連続溶接が可能であるため、比較的高能率です。
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TIG溶接であるため、ビード外観が綺麗であり、継手の機械的性能も優れています。
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バックシールド(BS)機構付きインターナルクランプにより、綺麗な裏波が確保できしかも径収縮を防止できます。
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オフラインで入力されたメモリーカードで溶接条件を管理するため、溶接士の熟練度に関係なく適正な溶接条件が出力されます。
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ティーチング式自動開先倣い、アーク電圧制御およびTV溶接モニターにより、溶接技能および溶接士の作業負担が軽減されます。
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溶接ヘッドは軽量コンパクトで取扱いが容易です。
ガイドレールを交換することにより、6B(150A)以上の管径に適用できます。
溶接ヘッドは各動作軸ごとにモジュール化され、メンテナンスが容易です。
局部バックシールドであり、アルゴンガスを節約できます。
2.システム構成
3.断面マクロ
溶接位置(時刻) | 断層マクロ |
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4:30 | |
6:00 | |
7:30 |