再生可能エネルギーに対する期待が高まるなか、2014年、当社はバイオマス発電事業における、国内初のプロジェクトファイナンスを実現させることに成功。「津バイオマス発電所」の建設・運営に向けて奔走したプロフェッショナルたちに密着した。

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プロジェクトファイナンス
実現に向けて突きつけられた現実

「プロジェクトファイナンス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。あるプロジェクトにおいて、プロジェクト自体から生じるキャッシュフローをもとに資金を調達する仕組みのことだ。バイオマス発電所を対象としたプロジェクトファイナンスは、世界でもほとんど前例がなかった。自治体との調整から収益性の高い事業計画スキーム・ファイナンススキームの構築、関係各署との契約など、乗り越えるべき課題が山積みだった。

プロジェクトマネージャーの金森は言う。「発電設備は建設コストが掛かりますが、再生可能エネルギーへの注目が高まる中で新たな制度も導入され、今回のような事業運営型ビジネスにも、チャンスがあると思いました。まずは、プロジェクト企画部の山田、小林、平本と共に『事業として成り立つのか』というところから検討をスタートしました。」

山田、小林は発電所建設のために、三重県庁や津市の農林水産部門、環境保全部門、港湾担当部門、企業誘致部門などとの調整や許認可取得に向けて奔走した。
「輸入燃料を用いたバイオマス発電所の建設は、三重県にとっても、津市にとっても初めての試みでした。はじめはどのような許認可や規制、届け出が必要なのか、全て手探り状態でした。法改正が必要な許認可もあり、提出書類を何度も作り直し、3年かけて説明・陳情を続けました。地域資源である未利用間伐材を活用した地域産業の活性化を期待する津市側と、当社の思いとが一致し、プロジェクトがスタートしました。」

金融機関との交渉の上では、融資を得るため、いかに安定した事業を運営できるかを客観的に証明しなければならない。平本には、技術面での証明が課せられた。
「『当社のボイラを使った発電施設の価値をいかに評価してもらうか』ただそれだけを考えていました。金融機関からは厳しい指摘もあり、当社の最先端技術やプラント操業の豊富な実績、天候などに左右されず24時間発電できることの有益性について何度も説明を行い、適正に評価していただくことができました。」

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事業計画と資金調達には
若手スペシャリストを抜擢

工事着工が迫るなか、プロジェクトの円滑な進行を見据え、金森は各領域のプロを集めた。経理の知識が豊富な玉置、長崎、小谷野。そして、各種契約審査で実績を残してきた法務部の駿河が加わった。

プロジェクトの成否を左右する事業計画の策定と、資金調達に携わったのは、玉置と若手の長崎、小谷野の3名だった。
「法人に対して行われる融資とは異なり、プロジェクトファイナンスでは、事業から発生する収益と事業の持つ資産のみが担保になります。つまり、『まだ存在していない事業』の価値と有益性を金融機関に示すことが不可欠でした。」

長崎は金融機関との借入交渉のなかで、慎重なリスク分担の姿勢を貫いた。一歩間違えれば大規模な損失につながりかねない。金融機関からは厳しい要求があったが、熱い議論と推敲を重ね、資金調達に成功した。

大手監査法人での経験を評価され、事業計画の策定を担当した小谷野は語る。
「建設されるバイオマス発電所では、未利用間伐材だけでなくパームヤシ殻も燃料とします。燃料の輸入取引が生じるため、為替変動リスクがつきまとい、プロジェクト実現の大きな壁となっていました。そこで、15年を超える長期の為替予約を提案し、金融機関、監査法人等との調整を進めました。日本ではほとんど前例のないスキームのため、約1年間に亘り何度も関係機関と調整した結果、ようやく実行に漕ぎ着けることができました。」

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入社3年目のネゴシエーターが
70もの契約を締結

契約書の文言は、読み方次第で捉え方が変わるため、慎重に検討しながら作成する必要がある。その上、このプロジェクトには多数の事業者が関わっており、事業者ごとに契約書を交わさなければならない。大量の契約書作成と締結を任されたのは、入社3年目の駿河だった。

「作成した契約書は70通を超えました。当社が20年間という長期に亘り事業を運営するため、通常の契約審査とは異なっていました。金融専門の弁護士に協力を仰ぎ、あらゆるリスクケースの想定からお金の流れまで、様々な知識や細心の注意を払って契約交渉を遂げました。」

長崎、小谷野をサポートしながら、金融機関との資金調達交渉をまとめるという大仕事をやってのけた玉置は語る。
「今後、一人前のエンジニアやプロジェクトマネジャーとして活躍するためにも、二人には、成功体験の実感を得てほしい、成長のきっかけをつかんでほしいと考えました。だからこそ彼らの意見を引き出し、主体的に関わってもらいました。今回のようなプロジェクトに関われる機会は珍しく、若手メンバーたちにとって貴重な経験となったはずです。」

最後に、プロジェクトマネジャーとして、バイオマス発電事業における国内初のプロジェクトファイナンスを実現させた金森に成功の要因を聞いた。
「メンバー全員が、『プロジェクトファイナンスによるバイオマス発電事業を実現する』という強い使命感をもっていました。一人ひとりが経験や知識を活かし、自分たちの力を最大限に発揮する。ベテランの強い意思と若手の成長がかみ合ったからこそ、成功につながったと確信しています。 今回の事例を活かしつつ、これを超える新たな発電事業を立ち上げたいですね。」
彼らの果てなき挑戦は、続いていく。





















PROJECT MEMBER PROFILEプロジェクトメンバー プロフィール

  • 岩廣 真悟

    金森 聖一 KANAMORI SEIICHI

    事業企画本部 電力ビジネス事業部
    事業推進部
    1987年入社
    理工学部 工業化学科

  • 工藤 勝

    山田 眞樹 YAMADA MASAKI

    事業企画本部 電力ビジネス事業部
    事業推進部
    1986年入社
    工学研究科 化学工学専攻

  • 小坂田 陽平

    小林 俊彦 KOBAYASHI TOSHIHIKO

    総務部
    1991年入社
    商業部 経営学科卒

  • 井上 武也

    平本 泰敏 HIRAMOTO YASUTOSHI

    エネルギー本部 発電プラント事業部
    八戸PJチーム
    1994年入社
    工学研究科 生産工学専攻

  • 井上 武也

    長崎 紘子 NAGASAKI HIROKO

    環境本部 企画管理部
    2010年入社
    経済学部 経済学科卒

  • 井上 武也

    玉置 揚一 TAMAKI YOUICHI

    関連企画部
    2003年入社
    政治経済学部 経済学科

  • 井上 武也

    小谷野 拓二 KOYANO TAKUJI

    経理部
    2014年入社
    商学部卒

  • 井上 武也

    駿河 示和子 SURUGA MINAKO

    東京事業部
    2012年入社
    法学研究科 公共法政策専攻卒