これは、単に“ミャンマー初のごみ焼却発電所を建てるプロジェクト”ではない。 受注時のスキーム考案、設計・調達時における海外拠点の積極活用など、数々の新たな試みを行った初めてづくしのプロジェクトだ。それゆえに生じた難題も多いが、成し遂げたのは、新たな経験に挑み続けた若いメンバーだった。

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プロジェクトチームの主なメンバーを見ると、まずその若さに驚かされる。プロジェクトマネージャーの大山と、エンジニアリングマネージャーを務めた横谷は30代なかば、その他メンバーは20代でプロジェクトに抜擢された。しかも、海外でのプラント建設は、全員がほぼ未経験だった。入社以来、他分野の事業に携わっていた大山は、社内のジョブチャレンジ制度を活用し、自らの意思で現在の部署に異動した。国際的な仕事にも関わりたい、新たなチャレンジに踏み出したい、そんな想いがあった。大山は言う。「今回のメンバーだったからこそ、頑張りが効きました。過去の経験に捉われず、柔軟な発想で課題を克服していくことができた。目的を共有しながら、チームみんなで前に進んで行った感じでした。」

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設計段階では、初めてインドの関連会社を起用した。しかし、文化や慣習の違いもあり、要求を理解してもらうまでにかなりの労力を費やすことになった。横谷が、その苦労を語ってくれた。

「日本だと図学という学問があり、それが設計図を作る上での基本的なルールになっています。でもインドには同様の学問がないようで、基準が不明確でした。プロジェクト当初はそうした文化的な違いを我々が知らなかった。技術の様々な部分で考え方の違いがありましたが、それらに双方が気づくことで、お互いの理解につながり歩み寄ることができました。」

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また、調達段階でも計り知れない苦労があった。ごみ焼却発電プラントの場合、高度な燃焼制御や高効率の発電のため、特殊な資機材を必要とする。日本のJISのような規格がない非工業国のミャンマーや、独自の工業規格を有するインドで、いかに要求に合った高品質なものをタイムリーに確保するか、それが大きな課題となった。

プロジェクトエンジニアとして、客先および関係行政機関との折衝をはじめ、下請け各社を含めた社内スケジュール管理など、各種調整業務に奔走した池田は言う。「長く続いた軍事政権の間、ミャンマーでは他国との貿易が止まっていました。そのため、物資が不足しており、現地で適切なものを見つけるのには大変苦労しました。輸入するにも、民主化により急増した貿易量に港湾機能が追いついていない。資機材をタイムリーに現地に納入するのは、かなり難しかったです。」

さらに4月中旬、ミャンマーでは国の祝日「水祭り」があり、およそ2週間、官庁も商業施設もビジネスも、あらゆる機能が止まってしまう。あらかじめその期間は工期に含めないようにしていたが、休み明けに思わぬ問題に直面した。2週間待機していた船が一度に港へ入ってくる。入りきれない船があふれ、コンテナも港に山積みになっていた。当然ながら通関手続は遅れ、通常1週間のものが2週間、3週間かかる。

しかし大山は動じなかった。「私は国内で短納期の仕事を多く経験していました。短納期プロジェクトでは納期遅延が頻繁に発生します。その時は遅れが出ているものの、工程のやりくりで何とか収まるのではないかとの算段がありました。資機材が順番通りに来ない時は、先にこっちをやりましょうとか、その場で臨機応変に決断を下していきました。」

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一人ひとりが責任を持ち、
少数精鋭で臨む

建設にあたっては、工程、安全、品質を守るための日々のマネジメントが肝要となる。それらを指揮するコンストラクションマネージャーを任されたのは、入社5年目の建設系エンジニア、押井だった。

「数ある機械器具設置工事の中でも、発電プラントは特に技術力を要します。工期を遅らせる訳にはいかないので、難航しそうな箇所の着手を現場状況に合わせ前倒しにするなどの対策を講じました。また、資機材の度重なる納期変更に合わせながら、随時計画を見直す柔軟さも大事にしていました。さらに大変だったのは、安全に対する意識の違いですね。 多くの人が靴を履く習慣のない国で、現場では作業着・ヘルメット・手袋・安全靴を着用する、という基本的な部分から徹底していきました。」

一人ひとりが、複数の役割を担いながら、あらゆる局面で責任を持って決断を下す。それが、大山の選んだチームビルディングだった。役割毎にローカルスタッフを雇用する選択肢もあったが、時間やコストを総合的に加味し、少数精鋭で臨むと決めていた。

アドミマネージャーである上田は、技術面以外、プロジェクトの円滑進行に必要なあらゆる業務をカバーしようと奮闘した。

「初めての業務だったので、社内にいる各分野のスペシャリストから、事前にアドバイスをもらいました。『資金はプロジェクトの血液、止めてはいけない』と言われ、起こりうるトラブルとその解決策を常にイメージするようにしました。ミャンマーでは、数億円規模の外貨両替をする実績が過去にあまり見られず、売上金を両替して本社に逆送金するにも一苦労。日本の銀行に協力を仰ぎつつ情報収集を続け、為替リスクの最小化に奔走しました。財務面以外にも、自分で決断しなければならない場面が多く、プレッシャーはひしひしと感じました。それを乗り越えようと思ったら、満足するまで調べる。そうした経験が自分の成長に繋がったかなと思います。」

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若きエンジニアが語る、
建設のダイナミズム

数々の課題を乗り越え、2017年4月、ついに竣工式が行われた。

押井は言う。「全ての苦労とたくさんの関係者の努力の成果が、プロジェクト完遂に結実したこと。この事が非常に嬉しいです。建設現場では、正解はひとつではありません。あらゆる状況を想定して常に情報を集め、自らが最適解を選び取り、実行していかなければならない。これが最も大変で、大切なことです。建設系エンジニアは、時に設計者よりも設計思想と図面を理解し、機械に詳しくならなければなりません。 プラント全体を理解するために、日々読み込む図面の量は、誰よりも多い。常に向上心と好奇心を持って業務にあたることが、一番大事だと再認識しました。また、エンジニアとしての技術や知識はもちろん、コミュニケーション能力や問題解決能力も重要になるのが建設エンジニアの仕事。そういう力を磨く努力を、日々忘れずにいたいですね。」

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東南アジアに広がる、
ごみ焼却発電プラントの可能性

振り返り、大山は語る。

「今回のプロジェクトは、予想以上に反響があり、周辺諸国からも注目されていて驚きましたね。次の目標は、東南アジアの国々でも補助金なしで、自立できる施設の建設・運営をめざすこと。実現の可能性は大きいと考えています。」

インフラ整備が急がれるミャンマーに完成したごみ焼却発電プラント。この実績と技術は今後、国境を越えて周辺の国々へと広がっていくことだろう。





















PROJECT MEMBER PROFILEプロジェクトメンバー プロフィール

  • 岩廣 真悟

    大山 努 OYAMA TSUTOMU

    環境本部 海外事業部 環境プラント技術部
    2002年入社
    理工学部 機械工学科

  • 工藤 勝

    横谷 昇 YOKOYA NOBORU

    環境本部 海外事業部 環境プラント技術部
    2002年入社
    理工学研究科 原子核工学専攻

  • 小坂田 陽平

    池田 泰彦 IKEDA YASUHIKO

    環境本部 海外事業部 CCEPJチーム
    2015年入社
    社会工学類 都市計画学主専攻

  • 井上 武也

    上田 浩之 UEDA HIROYUKI

    環境本部 海外事業部 営業部
    2013年入社
    ビジネス学部 広告学科

  • 井上 武也

    押井 博也 OSHII HIROYA

    プラント建設本部
    2011年入社
    自然科学研究科 材料生産システム専攻