プロジェクトストーリー05 国内初のプロジェクトファイナンスへの挑戦 バイオマス発電所を事業化に導いたチームの力

プロジェクトファイナンス実現に向けて突きつけられた現実

「プロジェクトファイナンス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。プロジェクトにおいて資金調達を行う際、会社として借入を行うのではなく、プロジェクトを遂行する事業会社を設立し、この事業会社が独立して借入を行う資金調達の仕組みのことだ。津市におけるバイオマス発電所の建設・運営資金は約90億円。バイオマス発電所を対象としたプロジェクトファイナンスは、世界でもほとんど前例がなかった。プロジェクトマネジャーの金森をはじめ集められたメンバーたちは、自治体との調整から収益性の高い事業計画スキーム・ファイナンススキームの構築、関係各署との契約など、乗り越えるべき課題が山積みだった。
「当社が発電に関する事業運営型ビジネスの検討を始めたきっかけは、2012年にスタートした『固定価格買取制度』です。固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度のこと。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、チャンスがあると思いました。まずは、プロジェクト企画部の山田、小林、平本と共に『事業として成り立つのか』というところから検討をスタートしました」。
山田、小林は発電所建設のために、三重県庁や津市の農林水産部門、環境保全部門、港湾担当部門、企業誘致部門などとの調整や許認可取得に向けて奔走した。
「輸入燃料を用いたバイオマス発電所の建設は、三重県にとっても、津市にとっても初めての試みでした。はじめはどのような許認可や規制、届け出が必要なのかなど手探り状態でした。許認可を得るための提出書類を何度も作り直したり、法改正が必要な許認可もあり、足掛け3年をかけて説明・陳情を続けました。地域資源である未利用間伐材を積極的に利用し地域の産業活性化を期待する津市側と、当社の思いとが一致し、プロジェクトがスタートしました」。
自治体との調整の他に、平本は金融機関と技術面での交渉が課せられた。
金融機関から融資を得るには、いかに安定した事業を運営できるかを客観的に証明しなければならない。そのため、金融機関は専門の技術コンサルタントや会計コンサルタント、保険コンサルタントを通じて事業を評価し、融資を決定する。

「『弊社のボイラを使った発電施設の価値をいかに評価してもらうか』。ただそれだけを考えていました。金融機関からは厳しい指摘もあり、当社が提供する最先端技術やプラント操業の豊富な実績、天候などに左右されず24時間発電ができるバイオマス発電の有益性について何度も説明を行ったことで、適正な評価をしていただくことができました」。

事業計画と資金調達には若手スペシャリストを抜擢

工事着工が迫るなか、金森は各領域のプロを集め、様々な視点から問題点を一つひとつ解決してプロジェクトのスピードを上げていく必要があると考えた。通常のプロジェクトでは、プロジェクトマネジャーが必要な人材や費用を確保し、チーム結成後プロジェクトを遂行していく。しかし、本プロジェクトは、次のステージに向かうたびにメンバーを増やしていった珍しいケースだ。2013年5月に経理のスペシャリストである玉置、2014年1月に経理部出身である都市環境本部管理部の長崎、同年2月には会計の知識が豊富な経理部小谷野が、3月には各種契約審査で実績を残してきた法務部の駿河が加わった。
プロジェクトの成否を左右する事業計画の策定と、資金調達に携わったのは、玉置と若手メンバーの長崎、小谷野の3名だった。
「法人に対して行われる融資とは異なり、プロジェクトファイナンスでは、事業から発生する収益と事業の持つ資産のみが担保になります。つまり、「まだ存在していない事業」の価値と有益性、事業計画を資金調達先である金融機関に示すことができるかどうかが不可欠でした」。
長崎は金融機関との借入交渉のなかで、慎重なリスク分担の姿勢を貫いた。一歩間違えれば当社にとって大規模な損失につながりかねないからである。金融機関からは度重なる厳しい要求があったが、熱い議論と推敲を重ね、資金調達に成功した。
大手監査法人での経験を評価され、事業計画の策定を担当した小谷野は語る。
「建設されるバイオマス発電所では、未利用間伐材だけでなくインドネシア・マレーシアを原産地とするパームヤシ殻もバイオマス燃料として発電します。パームヤシ殻というのは油ヤシの搾油時に発生するものです。重要な燃料が輸入取引であるため、為替変動リスクがつきまとい、円高から円安へと移った場合、燃料価格が高騰し事業収益を圧迫する可能性があり、プロジェクト実現の大きな壁となっておりました。そこで為替変動リスクの回避策として、15年を超える長期の為替予約を提案し、社内をはじめ、金融機関、監査法人等の関係機関との調整を進めました。日本ではほとんど前例のない長期の為替予約だったため、約1年間に亘り何度も関係機関と調整した結果、ようやく実行に漕ぎ着けることができました」。

入社3年目のネゴシエーターが70もの契約を締結

本プロジェクトには数多くの事業者が関わっており、事業者ごとに契約書を交わさなければならない。また、契約書の文言の読み方次第で捉え方は変わるため、慎重に検討しながら作成する必要があった。関係各署との契約書の作成と締結を任されたのが、法務部に在籍する入社3年目の駿河だった。
「金融専門の弁護士と協力しながら、作成した契約書は70通を超えました。通常の契約審査では取引をする会社や契約期間、取引の対価等の詳細を検討していきますが、当社が20年間という長期に亘り事業を運営するため、あらゆるリスクケースを想定することからお金の流れまで検討する必要があり、様々な知識や細心の注意が要求されました」。
長崎、小谷野を先輩としてサポートしながら、金融機関との資金調達交渉をまとめるという大仕事をやってのけた玉置は語る。
「今後、一人前のエンジニアやプロジェクトマネジャーとして活躍するためにも、二人には、今回のプロジェクトを通じて成功体験の実感を得てほしい、成長のきっかけをつかんでほしいと考えました。だからこそ『あなたはどうしたい?どう思う?』と、彼らの自主性を求めました。今回のようなプロジェクトに関われる機会は多くなく、若手メンバーたちにとって貴重な経験となったはずです」。
最後に、プロジェクトマネジャーとして、バイオマス発電事業における国内初のプロジェクトファイナンスを実現させた金森に成功の要因を聞いた。
「バイオマス発電所における、事業計画スキーム・ファイナンススキームの構築といった試みはこれまでにほとんど前例がなく、プロジェクトの検討段階から課題は山積みでした。ですが、『全員でプロジェクトファイナンスによるバイオマス発電事業を実現する』という強い使命感のもとに、経験も実績も異なる一人ひとりがプロフェッショナルとしての役割を果たし、自分たちの力を最大限に発揮する。そこにベテランの強い意思、そして若手の成長がかみ合ったからこそ、プロジェクトの成功につながったと確信しています。
今回の成功事例を活かし、若手メンバーと一緒に、今回のバイオマス発電プロジェクトを超える新たな発電事業を立ち上げたいですね」。
プロジェクトに人生をかける、プロフェッショナルたちの果てなき挑戦は続いていく。

PAGE TOP