突起付きT型鋼とコンクリートの合成床版構造(リバーデッキ)
テクノロジーの概要
リバーデッキは、突起付きT形鋼(DFT:Deformed Flange T-shapes)を底鋼板の補剛材兼コンクリートジベルとして使用する合成床版です。
突起付きT形鋼(DFT)とコンクリートの合成効果は約30年に渡って研究されており、その成果に基づいて開発された合成床版橋(リバーブリッジ)は、全国で400橋以上。リバーデッキはその技術を応用して開発されており、信頼性・安全性の高い構造として、約10万m2(平成23年現在)近い実績を有しています。
合成床版リバーデッキの特長
1.鋼・コンクリート合成効果
圧延でフランジ面に突起を設けた「突起付きT形鋼(DFT)」を主部材として用いています。また、突起により鋼部材とコンクリートを付着させ一体化を図るため、各々の特徴を活かした合理的な設計が可能です。
2.良好な施工性
ずれ止めとしてDFTを使用するためスタッドジベルなどの取付が不要です。また、鋼パネルはコンクリート系床版と比較して架設重量が軽いため、重機の小型化が可能です。さらに底鋼板が床版型枠を兼用しているため型枠・足場工が不要となり、短期施工に適しています。
3.高剛性
DFTが底鋼板を補剛しているため、鋼パネルの剛性が高く架設時の安全性に優れています。また鋼・コンクリートの合成効果により、床版支間が6mを越える少数主桁橋や細幅箱桁橋等の長支間床版への適用が可能です。さらに張出長が3m程度の大きな床版にも適用が可能です。
4.高疲労耐久性
高疲労耐久性床版として認知されているPRC50と同等以上の疲労耐久性を有しています。
- ※ PRC50:平成8年版道路橋示方書にてフルプレストレスで設計されたPC床版のPC鋼材料を半減した床版
5.経済性
鋼・コンクリートの合成効果により床版厚を薄くできることから、死荷重が減少し、主桁の合理的な設計が可能です。また適切な維持管理によりライフサイクルコストを最小化することが可能です。
設計・施工の基本的な考え方
1.適用基準
- 「道路橋示方書・同解説 Ⅰ共通編およびⅡ鋼橋編 ((社)日本道路協会)
- 「鋼道路橋の疲労設計指針」 ((社)日本道路協会)
- 「鋼構造物設計指針 PARTB 合成構造物」 ((社)土木学会)
- 「合成床版設計・施工マニュアル」 ((社)日本橋梁建設協会)
2.適用支間
支間部:最大8.0m
張出部:最大2.5m
3.使用材料
(1)鋼材
鋼材 | DFT,底鋼板(t=8mm) | 鉄筋(D19,D22) |
---|---|---|
材質 | SM400A |
SD295 SD345 |
(2)コンクリート
圧縮強度 (N/mm2) |
粗原料の最大寸法 (mm) |
スランプ (cm) |
水セメント比 (%) |
空気量(%) |
温和材(膨張材) (kg/m2)※1) |
---|---|---|---|---|---|
30 | 20 | 8 | 50 | 4.5 | 30 |
- ※1 乾燥収縮にともなうひび割れを防ぐため、収縮補償用コンクリートとして膨張コンクリートを使用します。
4.床版厚
h=2.5L+11
h:最小床版厚(cm)
L:床版支間(m)
床版で使用する合成床版の単位重量は、27.5kN/m3とします。
床版厚とDFTサイズ(標準)
床版支間 (m) |
床版全圧 (cm) |
DFT断面 (mm) |
---|---|---|
3 | 19 | DFT100×204×8×12 |
4 | 21 | DFT160×204×8×12 |
6~8 | 24~31 | DFT175×204×8×12 |
- ※1 乾燥収縮にともなうひび割れを防ぐため、収縮補償用コンクリートとして膨張コンクリートを使用します。
5.断面計算
1.床版作用
合成前死荷重には鋼パネル断面で抵抗するものとします。また、合成後の正の曲げモーメント領域は鋼部材とコンクリート、負の曲げモーメント領域は圧縮側コンクリートと鋼部材を有効断面とします。
2.主桁作用
合成桁として設計する場合、合成後の正の曲げモーメント領域はコンクリート断面、負の曲げモーメント領域は鋼部材と配力筋を有効断面とします。
6.死荷重たわみと疲労設計
1.死荷重たわみ
L/500以下(L:床版支間)
2.疲労設計
活荷重応力は、一定振幅応力に対する打ち切り限界以下になるようにします。
着目部位 | 主部材方向 | 配力方向 |
---|---|---|
溶接継手の種類 |
縦方向溶接継手 -すみ肉溶接継手- |
荷重非伝達型十字溶接継手 -非仕上げのすみ肉溶接継手- |
活荷重による許容応力範囲 (打ち切り限界) |
84N/mm2 | 62N/mm2 |
構造概要
1.構造概要
リバーデッキは、鋼パネル、上側鉄筋およびコンクリートで構成され、鋼パネルは底鋼板にコンクリートジベル兼底鋼板補剛用のDFTを接合した非常にシンプルな構造です。底鋼板は継手を高力ボルトの一面摩擦接合とし、主桁上では別途ハンチプレートをボルト接合により取付けます。
2.底鋼板
底鋼板は、型枠としての役割と鉄筋コンクリート床版における下側鉄筋の役割を果たします。
突起付きT形鋼(DFT)とはすみ肉溶接にて一体化されます。
3.突起付きT形鋼(DFT:Deformed Flange T-shapes)
ずれ止めは、合成構造において鋼パネルとコンクリートを一体として挙動させるための重要な役割を担います。リバーデッキではこのずれ止めとして、DFTを使用しています。DFTは、圧延段階でフランジ面に横節突起を設けたH形鋼(DFH)をウェブの任意位置で切断して得られるT形鋼であり、異形棒鋼D51と同等のコンクリート付着性能を有しています。
4.鉄筋
鉄筋は上面側に配置します。
-
DFT間に設置する主鉄筋
-
DFTの上側に設置する配力鉄筋
5.ハンチプレート
パネル間の連結は高力ボルト摩擦接合(1面摩擦)でおこなわれます。現地で足場工が設置出来ない場合は上側から施工できるワンサイドボルトでの施工も可能です。
6.添接板
ハンチプレートは底鋼板に曲げ加工を施して形成されます。ハンチプレート部には、コンクリートとの一体化を図るためのスタッドジベルが設置されます。
7.側鋼板
床版の外型枠として側鋼板を設置することを標準としています。
地覆・壁高欄部をコンクリートとする場合は、側鋼板とコンクリート部との隙間からの万が一の浸水を防ぐ目的で「浸水ストッパー」※を設置することも可能です。
- ※ 特許出願中
8.塗装
パネルの外面の防錆仕様を下記に示します。底鋼板には各種の防錆仕様の適用が可能です。
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C系塗装
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耐候性鋼材仕様
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亜鉛アルミニウム溶射
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溶融亜鉛メッキ
内面の防錆仕様は下記の仕様を標準としています。無機ジンクリッジプライマー15μmまたは無機ジンクリッジペイント30μm(有機の場合もあります)。